児童福祉

ヤングケアラー啓発活動

小学生6年生の6.5%、中学2年生では17人に1人がヤングケアラー

厚生労働省は、「『ヤングケアラー』とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがあります」としています。病気や障害のある親や兄弟の面倒を見る、アルコール依存やギャンブル依存、薬物中毒などの家族の対応をする、外国人や障害のある親の通訳をする事もヤングケアラーの役目になります。
 2020年度に中学2年生・高校2年生を、2021年度に小学6年生・大学3年生を、それぞれ対象にした厚生労働省の調査では、世話をしている家族が「いる」と回答したのは小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3 年生で6.2%でした。中学2年生の17 人に1 人がヤングケアラーであるという実態が明らかになりました。

日々家族の介護をして遅刻したり、家事のために宿題ができなかったり、さらに就職も出来なかったりします。また孤独や睡眠不足で子ども自身も、肉体的にも精神的にも大きな負担を抱えて生活するため支援が必要です。2020年、全国初で埼玉県がケアラー支援条例を施行したのを皮切りに各自治体がケアラーやヤングケアラーを支援する条例をつくる動きが広がっています。しかし、2022 年度の日本総研の調査では、ヤングケアラーの認知度はまだ低く、「聞いたことがあり、内容も知っている」と答えたのは、29.8%に過ぎないことがわかりました。周囲が気づくためにも啓発活動やヤングケアラーの支援活動が必要と考え、一般社団法人ケアラーワークスが行う活動に助成を行いました。

小学生6年生の6.5%、中学2年生では17人に1人がヤングケアラー

ヤングケアラーの寸劇と体験談で啓発活動!

ヤングケアラーの寸劇と体験談で啓発活動!

ケアラーワークスの代表理事 田中悠美子さんがケアラー体験者と出向いた越谷こどもサポートネットワークの出前講座には、近隣の小学校の校長、教頭、社会福祉士を目指す学生や社会福祉協議会の方など30名近くが集まりました。出前講座は2部構成でヤングケアラーの体験談とヤングケアラーを理解するための寸劇を行いました。田中さんがヤングケアラーの概要などを説明した後、認知症の祖母を母と2人でケアしてきた女性が登壇し体験談を披露しました。

高校生の時から母親が不在の時は介護のすべてを引き受けていた彼女は、その後大学を中退し、自宅でのケアと並行して介護施設で働き祖母を看取ったそうです。また、ヤングケアラーは介護の期間だけでなく、介護を終えてから自分の生活を立て直すことも大変だという現実を話していました。その後の質疑応答では活発な意見交換となり皆さんとても熱心でした。

寸劇は、メンタルヘルスに不調のある母親と発達障害で支援学級にいる小学3年生の弟のいる、小学6年生の女児が主人公です。
朝は、朝食を作って弟を起こし、ご飯を食べさせてから母親の薬の服用の管理をして登校します。登校時もごみを捨て、弟はADHDのため多動等で時間を要するため遅刻してしまい、担任の先生から注意を受けます。体育の授業では、疲れて洗濯できなかったため汚れた体操服で参加、放課後友人と遊ぶこともできません。そんな状況が続き担任の先生が不信に思い職員室へ呼ばれます。最初はなかなか事情が話せませんでしたが、寄り添って話を聴かれると、少しずつ心を開き事情を話すことができました。
 その後は、ソーシャルカウンセラーと繋がり、家にもヘルパーが入り、スクールカウンセラーを通じて弟の面倒も軽減されます。大人に対して自分自身の状況を発信することが出来たことで、女児の学校生活と笑顔が戻りました、という内容でした。寸劇を見ている方の中には、泣いている方もいて、介護の体験を思い出していたのかもしれません。

ヤングケアラーの思い
「周囲に打ち明けられないけれど、寄り添ってほしい」

また、立川市役所で行われた講座に元ヤングケアラーとして登壇した女性は、12歳の時に当時40代前半だった母親がくも膜下出血で倒れ、その後左半身まひと高次脳機能障害となり、父親とともに介護する生活になりました。父親は仕事があり、母親は平日デイサービスを利用していましたが、彼女は送り出しのケアをしてから登校し、学校から帰ると見守りや身体的な介護をしていました。時に母親の感情が爆発してしまうこともあり、精神的なケアもしなければいけなかったと話していました。ですが、多感な中学生の時には、障がいを持った母親を受け入れられなくなる時期もあったそうです。「今思えば、大好きなお母さんに甘えたいのに甘えられないという状況が、自分の気持ちを押し込めていくようになったためで、また差別や偏見も怖かったので周囲に打ち明けたりサポートを求めることも難しかった」といいます。

ヤングケアラーの思い。「周囲に打ち明けられないけれど、寄り添ってほしい。」

彼女は、他人にサポートを頼むことやデイサービス以外の行政サービスを利用することは出来なかったけれど、本当の支援は「ケアラーの持つ力を信じて寄り添ってあげることが大切だ」と話していました。そしてケアを始めて20年たち、ようやく受け入れられるようになったとも話していました。彼女は結婚して子どもにも恵まれ、今は、ダブルケアを担っていますが、一時は祖母が認知症になったためトリプルケアにもなってしまったそうです。
 こうした介護の経験について、「当時は辛かったけれど、今は体験を語ることを通して、ヤングケアラーの支援のタイミングや寄り添い方などを理解してもらい、社会を変えていきたい」と話していました。

ヤングケアラーは、「家族の介護は家族でしなければいけない」と思っていて、ケアの負担に本人も気づきにくいこと。また、家族の障がいや病気のことを周りには話したくないという気持ちがあり、なかなか支援につながらないという現状があります。また、子どもがケアをしているなどとは周囲の大人も思っていないので、気づかないという側面もあります。子どもたちを注意深く見守り、ゆっくり寄り添うこと。話してくれる環境を整えること、話してくれるまで待つことなども大切だということでした。

開催日程(2023年) 開催団体・参加者・人数

3月14日(火)
開催団体:多摩市子ども家庭支援センター(東京都多摩市)
参加者:市民・教育関係者・子どもの居場所関係者 30名
3月21日(火)
開催団体:NPO法人ケアラーネット みちくさケアラーズ カフェみちくさ亭(千葉県柏市)
参加者:市民・医療福祉関係者 ※ZOOMとの併用 50名
3月21日(火)
開催団体:熊本県認知症コールセンター(熊本県熊本市)
参加者:ケアラー当事者・医療福祉関係者  5名
3月22日(水)
開催団体:ケアラーカフェモンステラ(神奈川県相模原市)
参加者:市民・ケアラー当事者・医療福祉関係者 25名
3月25日(土)
開催団体:越谷こどもサポートネットワーク(埼玉県越谷市)
参加者:市民・学生・教育関係者・子どもの居場所関係者・医療福祉関係者・企業 30名
3月27日(月)
開催団体:立川市地域福祉課・子ども家庭支援センター(東京都立川市)
参加者:市民・行政職員・ソーシャルワーカーら 35名

当事業団では、2023年度もこうした啓発活動とヤングケアラー同士が話すことができる場の活動の支援を続けていきたいと考えています。

小中学校や子どもたちに関わる皆さんの集まりでのヤングケアラー啓発活動のお申し込みやケアラー同士で集いたいなどのご相談は、一般社団法人ケアラーワークスまでお願いいたします。

一般社団法人ケアラーワークスWEB
事務局電話:042-309-5130(平日 10時~17時)
e-mail:info@carers.works

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